「三日月とクロワッサン」の所感【エッセイ】

本の感想

こんにちは、なるふぉです。

東大の宇宙物理学者である須藤靖教授のエッセイである、「三日月とクロワッサン」と読了しました。


研究者の書く文章は教科書、論文、一般向けに科学を説明した新書などしかほとんど読んだことがないため、エッセイを書くとどんな感じになるのか興味があり、今回読みました。

今回はその所感をつらつらと。

科学のアナロジーで人生・幸せについて考える

まず印象に残ったパートは、人生と幸せを微分を用いた定式化です。数学をかじったことがあれば納得できる論理だと思います。もちろん、幸せとか人生の定義が正しいとすればですが。

人生の上昇率が幸せとなる、つまり人生の対数微分が幸せとなる微分方程式で表せるとかんがえると、対数の真数は定義上正であるから人生は定義上プラスである、といえます。

さらに人生についての微分方程式を解くと、人生は「日々の幸せの積み重ねである」ということが導けます。

この「人生は日々の幸せの積み重ね」というのは納得できるし、人生の上昇率が幸せというのもよくわかります。

例えば、日々美味しいものが食べれる経済的余裕があると、それが当たり前になり幸せを感じづらくなりやすいし、たまに美味しいものを食べると、同じものでも幸福感が大きく変わると思います。したがって、幸せは絶対量ではなく、過去との微分で感じることができると私も感じます。この感覚をちゃんと式を用いて表したのがこのエッセイで共感できたところの一つです。

自然現象を科学的に明らかにする研究活動では、科学的な知見だけでなく、時に人生とか幸せとかは何かを考えることにつながる経験をすることがあります。そのような点でも、大学院で研究をやっていてよかったと思う点です。

人生を豊かにするのが金銭とか時間とか定量的で客観的指標だけではない(むしろそれ以外の割合の方が多い?)と実感します。

ポスドク問題について

本書ではポスドク問題にも触れられています。

ご存知の方も多いと思いますが、ポスドクとは、ポストドクターの略で、「博士号を取得後、数年の任期つきの研究職」のことです。任期があるので数年後の職があるかわからない不安定な立場にある方々です。

本書ではポスドク問題というのを「ポスドクを10年続けても、常勤職(任期なし)に就けない人が多い」という問題と定義しています。

さらに、ポスドク問題の責任(犯人)は誰にあるのかについても議論しています。社会に受け入れ皿がないのが問題なのか、大学の常勤職が少ないのが問題なのか、そういう状況にありながらポスドクになる本人に問題があるのか。しかし誰が犯人かと特定するのはあまり意味がなく、どう改善していくのかを議論することの方が大切だと述べている。

このポスドク問題に関しては、依然として問題はあるが、この本が執筆された2014年と比べれば改善されてきていると感じる。依然としてアカデミックポストは少なく競争力が高く、一つの席に百人が募集することも珍しくない。一方、民間就職の方でも博士人材の活用に積極的な企業が増えてきているそうだ(学内の就職支援イベントより)。私の身の回りでも、就職を真面目に考えていれば、博士取得者で職に困る人は見たことがない。私がいたのが物理実験の業界なのでまだ民間企業との接点が多いだけかもしれないが。

須藤先生の講演は一度聞いてみるべき

大学生のころ須藤先生の本や講演をよく聞いていたが、どれも非常におもしろいです。

純粋なサイエンスだけでなく、科学とは物理とは、科学者とは何か、それこそ今回のようなエッセイ的な内容もあります。

須藤先生のホームページのtalkには過去の講演スライドも掲載されているので、ぜひ一度見てみることをお勧めします。

http://www-utap.phys.s.u-tokyo.ac.jp/~suto/

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