【ニセ科学】健康グッズ「テラヘルツ鉱石」は効果があるのか

疑似科学

なるふぉです。

とある雑誌で「テラヘルツ鉱石」という健康グッズが紹介されていました.

物理学を専攻していて,光学や物質科学に対してある程度知識があったので,

どういう謳い文句をしているのか気になり,調べてみました.

テラヘルツ鉱石とは

純度の高いシリコン(ケイ素)でできた人工鉱石のことをそのように呼ぶそうです.

使い方としては、健康用品として使うとのことです。

謳い文句では

「光と電波の中間領域の『テラヘルツ波』を発生する物質」

「自然界では赤ちゃんからテラヘルツ波の放射が最も多い」

「テラヘルツ鉱石の上に氷を乗せるとみるみる溶ける」

「健康問題を解決する(癌,脳梗塞,冷え性、肩こり など。お風呂に入れると良い、かっさなど)」

など言われているそうですが,一つ一つ見ていきます.

光と電波の中間領域の『テラヘルツ波』を発生する物質

はい,嘘は言っていませんが大概のものはそうです.

この物質が特別なものではないです.

そもそもテラヘルツ(THz)波は,「周波数THzオーダーの電磁波」

のことを指しています.

電磁波は「空間の電場と磁場の変化で伝搬される波動」で,

X線,γ線,紫外線,可視光,赤外線,マイクロ波,電波等も電磁波です.

そしてテラヘルツ波を1〜10THzの電磁波だとすると,波長30〜300µmの電磁波のこと.

ちょうど赤外線と呼ばれる領域に当たります(どこまでを赤外線と呼ぶかの具体的な線引きも分野によって異なりますが).

赤外線は人間の体からも出ていますし,常温物質からの熱放射はほぼ赤外線です.

太陽からの電磁波放射のピークは可視光波長域にありますが,赤外線も多量に放射しています.わざわざ鉱石を用いる必要はないのです.

LEDなど非熱的な放射をしている場合は赤外線が出ない,なども言われますが,LED電球を構成している物質からは赤外線が出ています.

自然界では赤ちゃんからテラヘルツ波の放射が最も多い

何を根拠に言っているのかは不明です.

熱放射の場合,放射量は物質の表面積(S),温度(T),放射率(ε)(表面の物質素材で決まる)で決まります.

人体の放射率は0.99でほぼ変わらないためあとは表面積と温度の問題.

温度に関して,新生児の平均体温は成人よりも高く37.5℃(絶対温度310.6K)らしいです.

(https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=35097)

成人の平均体温を36.5℃(絶対温度309.6K)だとすれば,「単位表面積あたりの熱放射量」は赤ちゃんの方が比較的高いことになります.ただ,熱放射量の差は1%程度です(シュテファンボルツマンの法則を用いれば判ります).

表面積は成人の方が赤ちゃんの何倍もあります.

なので,成人の方が多量にテラヘルツとやらを放射しています.

もっと言えば,風邪を引いている人は体温上昇しているので,テラヘルツ波がたくさん出ていいのではないでしょうか.

テラヘルツ鉱石の上に氷を乗せるとみるみる溶ける

陶器の上に置かれた氷とテラヘルツ鉱石とやらの上に置かれた氷とで,

どちらが先に溶けるのかを比較している動画がyoutubeにアップされていたりします.

これは熱伝導率の問題です.

熱伝導率とは,温度差のある状況で熱がどれだけ伝わりやすいかを表す物理量で,

物質により固有の値を持ちます.

テラヘルルツ鉱石(ケイ素)の熱伝導率は約150W/(m・K) 

お皿(陶器)の熱伝導率は1W/(m・K).

テラヘルツ鉱石の方が熱伝導率が高く,氷の温度を上昇させやすいため氷が早く溶けるというものです.

氷が早く溶ける物質をご所望であれば,金属,特に銅はいかがでしょう(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%B1%E4%BC%9D%E5%B0%8E%E7%8E%87).テラヘルツ鉱石とやらより約2,3倍は熱伝導率が良いです.

健康問題を解決する

根拠があれば逆に教えて欲しいです.科学的な効果を述べているもののパターンには,

①本当に実験的証拠があってそのメカニズムも明らかになっているもの

②実験的証拠はないが,メカニズムの仮説があるもの

③実験的な証拠はあるが,メカニズムが不明のもの

④実験的証拠もなく,メカニズムも不明であるもの.

があります.①は大手を振って科学的根拠があると言っていいと思いますが,他は微妙です.

今回のケースは④に該当します.

根拠があると言われている方は「フーリッヒ仮説」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%92%E4%BB%AE%E8%AA%AC)のことを言われているのではないでしょうか.

フーリッヒ仮説は「細胞膜はテラヘルツ帯のある周波数で共鳴振動しており,その周波数の電磁波を照射することで,何らかの比熱的作用が予想される」という仮説です.

ものにはそれぞれ共鳴する周波数というのがあるので,何らかの比熱的作用があるかもしれない,というのは考えられないこともないのですが,そもそも「仮説」ですので検証がなされていません.

仮に何らかの作用があるとして,「体に良い方に作用する」とは言っていません,

さらに,百歩譲ってこの仮説が正しく,体に良い方に作用するとして,このテラヘルツ鉱石から放射される電磁波は周波数範囲が広いため,何ら効果がないはずです.共鳴周波数のみを発生するテラヘルツ波レーザー,LEDの開発が必要でしょう

もちろん,そう言ったレーザー,LEDがあったとしても効果は仮説にすぎず,科学的に確かめられたものではありません.記事によっては,テラヘルツ鉱石を否定し,テラヘルツ波を放射する(と言う)ライトを勧めるものもあります.ある商品「A」を科学的根拠がないと否定し,別の商品「B」を勧めれば,さもBが科学的根拠があるように見える傾向にあると思ってそういう記事が作られるのではないでしょうか.科学的根拠があれば,査読付き論文の引用が書かれているはずです

名古屋大の教授などは勝手に名前を使われていることを受けて,反論・注意喚起もされています.

川瀬研究室

まとめ

これらの健康グッズは,科学的根拠がなく,「流れ星に願い事をすれば願いが叶う」程度の意味しか持っていません.


が,いかに非科学的であろうが,流れ星に願い事をするかどうかは個人の自由です.

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