なるふぉです。
「地平線を追いかけて満員電車を降りてみた 自分と向き合う物語」という長いタイトルの物語を読んだ。今回はその感想です。
結論としては、「幸せって何なんだろうか」と考えた人は読んでみても良いかもしれない。
本の概要・要約
周囲の人間や社会によって,外的に与えられた幸せに対し,本当にその人の幸せ・成功とはなんなのかを,支配人と対話する形でそれぞれの登場人物が悩み,気づく物語集.
「お金を稼げば幸せなのか」
「人・社会に合わせないと成功できないのか」
「そもそもいつか死ぬのに(外的に与えられた)成功に意味はあるのか」
「本当にやりたいことを社会の目を気にして塞いでいないか」
などのテーマを扱っている.
感想
この本の筆者は紀里谷和明氏(紀里谷和明 – Wikipedia)である.
宇多田ヒカルの元夫で,GOEMONなどの映画監督でもある.
読み終えた後,検索して「ああ,あの人か」となった.
よくある自己啓発書と異なるのは,「幸せ」の具体的正解(お金,名声)を前提として置いていないところにある.
幸せを感じる瞬間・場面は個人によって異なるのだから,外的に与えられた「幸せ」の定義が自分に当てはまるかは自明ではない.
例えば,第一章の主人公は,お金を稼ぐことが幸せだと考えていたが,「稼いで何をしたいのか?,物をいっぱい買えれば幸せになるのか?」という問いに答えられなかった.
なぜお金を稼ぎたいと思うようになったかの原体験を掘り下げると,青年期にバカにされたことがきっかけだと気づく.その体験が心の奥底に根ざしており,バカにされないようにする方法として「お金を稼ぎたい」と感じるようになったとのこと.
しかし,バカにした本人はそのことをなんとも思っていない.バカにされることで,その人の本質的価値は変わらないということを気付かされ,「幸せ」の形が揺らぎ始める.
本当にそれで「幸せ」を感じられていたらいいのだが,現実と理想のギャップにこの主人公は苦しんでいた.そのような苦しい場合は「幸せ」とはなんなのかを考え直してみるといいかもしれない.
最後にちょっとした小ネタがあるので,noteの編集後記を読んでみるといいと思う.
(noteにはちょっと「本で言ってたことと矛盾してないか?」と気になるところはあるが.)
Amazonレビューをみて
『「お金に執着するな」「肩書きにこだわるな」などの価値観は時代遅れで,本書に登場する人は極端』という意見をレビューで見たが,本書はそれを否定しているのではないと感じる.
お金や肩書きでなく,精神的な豊かさを求めるようになったといっても,その精神的豊かさという物自体が周囲のコミュニティで共有され,外的に与えられたものになっていないかを再確認する必要がある.
たとえば,明確にやりたいことが定まっていないのに,「成し遂げたいことがないのはよくないこと」「将来の夢がないのはよくないこと」と感じ,当たり障りのない夢をでっちあげてしまうこともあるであろう.それは本末転倒である.
これは本書でいうことろの<大人の心>(社会に適合するために作り上げた理性や壁)に覆われた状態と同じである.
そうではなくて,自分の原体験を見返し<子供の心>(心から幸福を感じられるものはなんなのか)を明らかにすることが,限られた人生で大事なのだと本書では伝えていると思う.
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