なるふぉです。
大学院生の研究生活はメンタル的不調になりがちで、私自身もメンタルがボロボロな時期もありました。そうした中でなんとか研究を続け、博士課程まで修了することができました。
世間的にも、大学院生(特に博士課程)は不安にさいなまれる傾向にあるようです。
今回は「なぜ大学院生はメンタルが落ち込みやすいのか」と「メンタルが落ち込んだときの対策」「落ち込まないようにするには」を考えていきます。
なぜ大学院生はメンタルが落ち込みやすいのか
私が実感するに、以下の理由により院生はメンタルが不安定になりやすいのだと考える。
閉鎖的な人間関係であること
研究室に高頻度で通うことで、人間関係が研究室内で閉じてしまいがちです。複数の人間関係のチャネルがあれば関係のウェイトを取捨選択することができるのですが、少人数だと選択肢がありません。
さらに、修論・博論の時期には研究室のウェイトが大きくなり、より密に関係しなければならなくなってしまいます。
さらに、教授と学生という明確な上下関係があります。ハラスメントが起きやすい、是正されにくい環境にあるといえます。
未知の領域であること
研究とはそもそも、「人類が到達していない知の最先端」です。そのため、未知の現象を相手にしなければなりません。
これまでの学生の勉強の範囲では答えがあり、最悪わからなければ解答を見れば解決していました。
周囲の人も経験したことない未知のことも起こりうるため、相談すれば解決するとは限りません。
そのような「どうすればいいかわからない』状況というのは強いストレスがかかります。
研究できない=価値がない と考えがち
研究にかける時間が支配的になってくると、こういう思考に陥ります。
時間を累積したものが人生となります。そのため、「時間をかけたもの=人生の一部」と無意識に考えてしまいます。
「これだけ時間をかけたのに研究成果が得られない」という認識から、「研究成果が出せない自分には価値がない」と思ってしまう。
このように、かけた時間と成果を比較するとネガティブな心理になってしまいます。
学歴が高い傾向にあること
大学院まで進んで研究の道を志望する人は、学歴が高い人が多い傾向にあると思います。
偏差値の高い高校・大学にすすんできた人は成績がよく、これまで肯定されてきた・成功体験を積んできた人が多いと感じてきました。
ただしそれは勉強の面で。
勉強は既知のことを学ぶのに対し、研究は未知のことを開拓する活動で、性質が異なります。そのことを認識せずに研究の道に進むと、壁にぶつかった際にどうすればいいかわからなくなってしまいます。
メンタルが落ち込んだときの対策
自分の中で「ネガティブな思考に取り憑かれて、研究が進まない」と感じた場合、以下のような対策を私は取ってきました。
まずは休む
これが一番です。その日1日休んでみる。もしくは早めに帰る。
ポイントは、休むことに罪悪感を抱かないことです。
真面目な人ほど「ただでさえ研究が進まないのに休んでいいのだろうか、休むことは悪いことだ」と感じて、ソワソワしてしまうと思います。
「もう休むことにきめたのだから、罪悪感は抱いても変わらない。しっかり休養することに専念するのがミッションだ」と思い、精一杯休みましょう。
私の場合、朝から休めば夕方にはポジティブになっていました。その状態で、明日から研究をどう進めるかを考え始め、研究再開していました。
思い切って相談をする
これは2つの方法があると思います。
1つ目は、教授や先輩、第三者に研究活動について相談すること。研究が進まないことが理由の場合は効果的です。
指導教員は院生の研究の指導が仕事なので、相談することは普通のことです。また、普段の進捗報告会の時間が短い、頻度が少ない場合があります。ちゃんと時間を作って相談する機会を作ることで、より深い議論ができたり、普段コメントしない先輩から新たなアイデアがもらえたりします。
2つ目は、メンタルヘルスの専門に相談すること。思い切って、大学の心理カウンセラーに相談する、心療内科に相談するなど。
それまでそういったところに行ったことがない人にとってはハードルが高いと思うのですが、これも一種の社会勉強と思って行ってみてはどうでしょうか。専門家に相談して、何度も通うことになる可能性もありますが、遠回りに見えて一番の近道かもしれません。
メンタルマネジメント
普段からメンタルが落ち込まないようにすることも大事です。社会人になってより一層重要だと思ったのはメンタルマネジメントの能力です。
メンタルは低下しやすい環境であることを把握する
研究室という環境自体が心理的な不安定性を起こしやすい環境であることを認識しましょう。
ネガティブな気持ちに陥りがちになっても、自分を必要以上に責める必要はなく、「そもそも、そうなりやすい環境なのだから、自分を責めてもしょうがない」と割り切りましょう。
思った成果が得られない=研究能力が低い ではない
研究で思った成果が得られなかったとしても、それは自身の研究能力が低いためとは限りません。以下のようなコントロールできない外的要因が大きく関わります。
- 自然科学は人類の想定したようになるとは限らない
- 指導教員の指導不足・不適切なテーマ設定
- 研究設備のスペック的に無理。予算上設備更新ができない。
- 先行研究・論文のミスの可能性
すべてを外の原因にしていいとは思いませんが、自分がしんどくなるくらいなら、外的要因のために仕方ないと割り切ってしまうのも一つです。
「当初の目的まで達成しなかったが、ここまではわかった」と、縮小してでも成果としてまとめるのもありです。
周囲の人への相談ハードルを下げる
少なくとも指導教員・共著者は同じ研究をする仲間であり、敵ではありません。また、同じように研究で悩みを持ってきた人生の先輩であることもあります。
飲み会の席などで友人の研究者や教授と話していると、自分と同じように研究生活で病んできた経験があったりします。順風満帆に見えて本人は苦労してきたのだなと思います。こんなに悩んでいる・悩んできたのは自分だけじゃないと認識すれば、比較的心が軽くなると思います。
健康的な生活を心がける
身体の健康と心理の健康はつながっているとよく言われますが、そのとおりだなと思います。
規則正しい生活・軽い運動は心身ともに健康することを、社会人になって実感しました。
大学院生時代は、何時に研究室に行ってもよく、何時に帰っても良いため、朝遅く起きて、夜中まで研究室で作業ということも多かったです。更に、起床・就寝・食事の時間もバラバラでした。
社会人になって、(フレックス制ではあるものの)大体9時-17時で仕事をして、残業も労働基準法で管理されているため、不規則な生活になりにくいという環境になりました。そのためか、社会人になってからメンタル不調に陥ることがほとんどなくなりました。
まとめ
大学院生のメンタルヘルス事情を、実体験を踏まえてまとめてみました。
社会人になってから研究室というのが良くも悪くも特殊な環境であったと実感しています。
大学院に進んで研究を志す優秀な方たちが、精神面で打ちのめされてドロップアウトされるのは社会の損失・問題だと思っています。そのような方が少しでも減るように願っています。
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